個別映画評
サブウェイ・パニック
THE TAKING OF PELHAM ONE TWO THREE

点数 | ![]() ![]() ![]() ![]() |
---|---|
年代 | 1974年 |
国 | アメリカ |
時間 | 105分 |
監督 | ジョセフ・サージェント |
脚本 | ピーター・ストーン |
音楽 | デヴィッド・シャイヤ |
出演 | ウォルター・マッソー、ロバート・ショウ、マーティン・バルサム、ヘクター・エリゾンド、アール・ハインドマン |
白昼堂々とニューヨクの地下鉄を乗っ取り、乗客の命と引き換えに、市当局へ身代金を要求する犯人たちと、地下鉄公安局とのかけ引きを描くこの作品は、プロットの巧妙さと、達者な演技陣をそろえ、とても30年も前の作品とは思えぬ面白さだ。
ペラム駅発123号列車に、停車駅ごとに乗り込んでくる帽子に黒メガネ、鼻ヒゲ、ロングコートと、同じいでたちの不気味な男たち……。そして、4人目の男が運転席の窓を開けさせ、いきなり車掌に拳銃をつきつける冒頭から、観客を物語の世界にグイグイ引き込んでいく。男たちは、お互いを、ブルー(ロバート・ショウ)、グリーン(マーティン・バルサム)、グレイ(ヘクター・エリゾンド)、ブラウン(アール・ハインドマン)と色の名で呼び合うことで素性を隠す。そのころ、地下鉄公安局では、不審な動きの123号車に気づき司令室の直通電話で呼びかけるが応答がない。やがて、先頭車両を切り離した犯人たちは、乗客17名と車掌一人を人質に、小額紙幣で100万ドル、1時間以内に届けるよう要求、さらに、1分遅れるごとに人質の殺害を予告してくる。かくして、冷静沈着な主犯格、ブルーと、飄々として豪胆なガーバー警部補(ウォルター・マッソー)の、虚々実々のかけ引きが始まるのだが、短時間に大量のお金が準備きるのか?そして間に合うのか?が最初の見せ場となる。
物語は、自動小銃を手にする男たちに怯える乗客と、刻々と過ぎていく時間のはざまで展開していく。犯人たちの性格付けも、紳士風だが凶暴な一面を見せる男や、クシャミの止まらぬダサ男だったりと、定石を少しはずした設定が面白く、ことに、クシャミ男の“オチ”は読めるにしてもおもしろい。主犯ブルー役のR・ショウが妥協を許さぬ毅然たる男を演じれば、W・マッソーは、おっとりとしながらも、決断力のある警部補を、これまた渋く演じている。前半に登場するカリカチュアライズされた四人の日本人は、見ていてなんともやりきれないが、終盤のオチに救いがあるので許すとしよう。そして訪れるクライマックスの地下鉄大暴走は、CGやSFXにない生々しい迫力シーンの連続で、今見てもまったく時代の遜色を感じさせない逸品といえる。
(2007/10/03)