個別映画評
あかね空

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年代 | 2006年 |
国 | 日本 |
時間 | 120分 |
監督 | 浜本正機 |
脚本 | ニ浜本正機、篠田正浩 |
音楽 | 岩代太郎 |
出演 | 内野聖陽、中谷美紀、中村梅雀、勝村政信、泉谷しげる、角替和枝、武田航平、細川よしひこ |
直木賞受賞作である山本一力の時代小説を、NHK大河ドラマ「風林火山」で、主役の山本勘介を演じた内野聖陽と、「嫌われ松子の一生」で、日本アカデミー賞主演女優賞に輝いた中谷美紀を主人公に、江戸は深川を舞台に描く、豆腐屋一代記だ。
行き来する人でにぎわう江戸の永大橋で、ちょっとした油断から、幼い息子とはぐれる夫婦のプロローグで物語は幕を開ける。その夫婦、老舗豆腐屋“相州屋”の主人、清兵衛(石橋蓮司)と、妻おしの(岩下志摩)は、以来息子の安否が頭からはなれない。それから20年の歳月が流れ、ある日、深川の蛤長屋の井戸端で水を手に取る男がいる。京の豆腐屋で腕を磨き、今は独立を夢見て江戸へ下って来た若者、永吉(内野聖陽)だ。彼は長屋の井戸水に惚れこみ、長屋を借りて念願の豆腐屋“京や”を開く。そんな永吉を小まめに世話する同じ長屋の娘おふみ(中谷美紀)は、いつしか永吉に惹かれ、やがて二人は祝言を挙げることに……。しかし、かんじんの豆腐は売れなくなっていく。固めの江戸前豆腐になれた人々には、やわめの京風豆腐が合わなかったのだ。永吉は落ち込むが、けなげなおふみは、そんな永吉を明るく支えるのだった。一方、“相州屋”のおしのは、好奇心から“京や”を訪れるが、永吉のなかに行方知れずの息子の面影を重ねてしまう。この夫婦を演じる石橋蓮司、岩下志摩の演技もさすがだが、主人公“永吉”と、賭場の親分“傳蔵”を「陽」と「陰」とで演じ分けた内野聖陽の技量も見ものだ。このあと、三人の子供にも恵まれ、大通りに店を移したしあわせな“京や”に、次々と天災や苦難の雨がふりそそぐ……。
江戸の街並みや人々の風情もからりと描かれ、ことにVFX映像が描く永大橋など、浮世絵を思わせて美しい。そして、全体に流れる雰囲気も、題名が象徴するように、どこかほのぼのとしてあたかいい。派手さはないが、好感のもてる人情劇となっている。
(2007/10/16)