個別映画評
ブラック・ダリア
THE BLACK DAHLIA

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年代 | 2006年 |
国 | アメリカ |
時間 | 122分 |
監督 | ブライアン・デ・パルマ |
脚本 | ジョシュ・フリードマン |
音楽 | マーク・アイシャム |
出演 | ジョシュ・ハートネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ヨハンソン、ヒラリー・スワンク、ミアー・カーシュナー |
1947年、ロサンゼルスで実際に発生した事件を元に、「L,A,コンフィデンシャル」の作家ジェイムズ・エルロイの手になる原作を「アンタッチャブル」や「ミッション:インポッシブル」の才人監督B・デ・パルマが、時代色も豊かに描いた娯楽作だ。
女優志願の若い女性が胴体から二つに切断された姿で発見され、しかも口を耳まで裂かれたこの事件は「世界一有名な死体」と報じられ、その被害者を人々が、当時公開されていた映画「ブルー・ダリア」(青い戦慄)にたとえ「ブラック・ダリア」(黒い戦慄)と呼んだことに端を発する。
しかし、この映画、結論から言うと、人間関係が複雑で分かり辛く、観客は消化不良のままENDクレジットを迎えるのが難点だ。そこで、人物相関図を書くとこうなる。まず、ロス市警の二人の名物刑事バッキー・ブライカート(ジョシュ・ハートネット)と、リー・ブランチャート(アーロン・エッカート)だ。ふたりとも元ボクサーで、警察主催のチャリティ・ボクシングで対戦、その後親友となる。その、リーの恋人ケイ・レイク(スカーレット・ヨハンソン)は、もともとリーが逮捕した銀行強盗犯デウィットの娼婦だったが今はリーと暮らしている。なお、服役中のデウィットは出所間近で、彼を除く前述の3人が物語の柱だ。これに絡んでくるのが被害者となるエリザベス・ショート(ミア・カーシュナー)とそのレズ仲間ローナである。さらに、ハリウッドのセット建材で財をなした富豪エメット一家、ことに長女マデリン・リンスコット(ヒラリー・スワンク)は殺害されるエリザベスに酷似している、という設定だ。そして、この一家がかかえる闇の部分が、事件に大きな影を落としていたのだ。
水と氷ほどにタイプが違い、警察仲間から“ミスター・ファイアー&ミスター・アイス”と呼ばれる刑事コンビが、陽気だが激しやすい男と、無口で沈着冷静な男をA・エッカートと、J・ハートネットがそれぞれ好演している。しかし、女優たちが魅力に乏しく、特に、H・スワンクがどう贔屓目に見ても、被害者エリザベスに似ていないのは痛い。この他にも、富豪エメットの友人も絡むなど、その複雑さが物語の生む緊迫感を薄める結果になったのが惜しまれる。
(2007/09/14)