個別映画評
決断の3時10分
3: 10 TO YUMA

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年代 | 1957年 |
国 | アメリカ |
時間 | 92分 |
監督 | デルマー・デイヴィス |
脚本 | ハルステッド・ウェルズ |
音楽 | ジョージ・ダニング |
出演 | グレン・フォード、ヴァン・ヘフリン、フェリシア・フアー、レオラ・ダナ、ヘンリー・ジョーンズ |
サスペンス活劇か、はたまた戦争映画か、と思わせる邦題のこの作品は、なんとまぎれもない“西部劇”なのである。
これまでにも、およそ“ウェスタン”に似つかわしくない題名の西部劇はいくつかあった。たとえば、ロック界のスーパー・スター、エルヴィス・プレスリーの映画デビュー作「やさしく愛して」や、アーサー・ペン監督の「小さな巨人」などもロマンス映画やアニメ映画と間違えそうな題名だった。そんな中でもひときわ目を引く本作の「3:10 TO YUMA」という原題は「3時10分発ユマ行き列車」と訳すのだろうが西部劇らしからぬ題名がユニークで、今もって根強いファンを持つ“ウェスタン”の佳作だ。
物語は、アリゾナの貧乏牧場主ダン(ヴァン・ヘフリン)が息子ふたりと牛追いの途中で目撃するベン・ウェイド(グレン・フォード)一味の駅馬車襲撃場面から始まる。やがて町に現れたベンを住民の通報で保安官が逮捕する。だが、逮捕はしたものの、11人いる手下たちがいつボスの奪還に動き出すかも知れず、ひとまず刑務所のあるユマへ護送することになる。そこで保安官さえ嫌がる護送役を、渇水で家畜の水に困る主人公ダンが、200ドルの報酬で引き受けるのである。この物語は、事件発生当日から翌日午後の列車到着までの十数時間のお話なのだが、父と息子、夫と妻さらには町の男たちそれぞれの微妙な感情の揺れと、突然失うかも知れない命へのこだわり等を絡ませながら、きわめてリアルな展開をみせる。ここには西部劇の醍醐味であるハデな銃撃戦や、お決まりの“殴り合い”シーンはないが、ただ、「撃ち合い」を“怖いもの”だと感じさせるリアルな説得力が確かにある。
公開当時は、先に封切られたゲーリー・クーパー主演の傑作西部劇「真昼の決闘」の“二番煎じ”扱いを受け、影も薄かったが、主人公の立場をありふれた保安官でなく、一介の民間人にしたことで物語に生活感と人間味が増し、これはこれで捨てがたい味の西部劇となっている。なお、本作は、ラッセル・クロウと、クリスチャン・ベイルで2007年にリメイクされており、ほどなく日本でも見られるのではないかと、今から楽しみなところでもある。
(2008/07/04)