個別映画評
華麗なる激情
THE AGONY AND THE ECSTASY

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年代 | 1964年 |
国 | アメリカ/イタリア |
時間 | 139分 |
監督 | キャロル・リード |
脚本 | フィリップ・ダン |
音楽 | アレックス・ノース |
出演 | チャールトン・ヘストン、レックス・ハリソン、ダイアン・シレント、ハリー・アンドリュース |
この映画は、中世の大画家ミケランジェロがバチカン宮殿のシスティナ礼拝堂天井にフレスコ画を描く物語だ。監督は往年の名作「第三の男」で知られるC・リードで、ここでは堂々たる史劇大作に仕上げ、140分近くの長尺をダレることなく重厚に描いている。
映画はまず、ミケランジェロが15才で作成した彫像「階段の聖母」から、死にいたるまで手を加え続けたロンダニーニの「ピエタ」まで、その作品群の紹介と解説をオープニングにして幕を開ける。
ローマに住むミケランジェロ(チャールトン・ヘストン)は、時の教皇ユリウス2世(レックス・ハリソン)から呼び出され、システィナ礼拝堂の天井に使徒のフレスコ画を描くよう命じられる。しかし、彼は彫刻家であることを理由に描くことを拒む。だが、結果的にはユリウス2世の命令に従うことになるのだが、金銭がらみのエピソードを始め、当時の主従関係のしがらみや、雇われ画家の悲哀がにじみ、そこには中世という時代の暮らしぶりが垣間見えて面白い。
こうして引き受けた天井画をミケランジェロはいやいやながら描き始めるのだが、「いつ出来るのか」と急かせる教皇と「完成した時」と答えるプライド高いふたりの男の意地の張り合いと、そこに生まれる奇妙な友情がこの映画の大きな見どころだ。、演じるC・ヘストン、R・ハリソンふたりの名優の息のあった丁々発止の掛け合いが実に楽しい。さらに、天井画が少しづつ姿を現す制作過程は、観客もまた組み上げた足場の上で“名作誕生”に立ち会う気分が味わえるのもありがたい。
という訳でこの映画、すでにバチカンを訪れたことのある人にも、これから行ってみようと思っている人にも、そしてもちろん、まったく行く気のない人にだっておススメの一本だ。
(2009/04/15)