個別映画評
オルカ
ORCA

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年代 | 1977年 |
国 | アメリカ/イタリア |
時間 | 92分 |
監督 | マイケル・アンダーソン |
脚本 | ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ、セルジオ・ドナティ |
音楽 | エンニオ・モリコーネ |
出演 | リチャード・ハリス、シャーロット・ランプリング、ウィル・サンプソン、ボー・デレク、キーナン・ウィン |
今思えばこの映画は、当時“サイエンス・パニック・アドベンチャー・シネマ”(S・P・A・C)と名付けられ“スパック・ロマン”と呼ばれた超大作だった。
しかし、先に公開されて大ヒットした「ジョーズ」の亜流と揶揄されて盛り上がりを欠き、いつの間にか忘れられたものだ。ところがこの映画には“もう一度見たい”と思わせる何かがあったのだろう。今もって映画ファンの間で語りつがれている不思議な作品だ。
映画は序盤、海洋学者レイチェル(シャーロット・ランプリング)に「オルカ」について語らせる。それはこうだ。「オルカ」とは鯱(シャチ)のラテン名“オルカ・オルシナス”からきており「死を招く者」の意味を持ち、クジラ類の中では最速にして、オスの体長は9メートル、重さは6トンにも及ぶ。さらに、一夫一婦で生涯を添い遂げる優しさと、サメをも襲う獰猛さを併せ持つ最強の海洋生物であること、などだ。
つまりこれは、オルカの習性を前もって示し、その凄さと怖さを観客にアピールしたい監督のねらいでもある。
漁師ノーラン(リチャード・ハリス)は捕獲したサメを水族館に売るのが仕事だ。だがある日、オルカの捕獲を試みたノーランは生け捕りに失敗。身ごもったメスのオルカを胎児ごと死なせてしまう。
だが海中でこれを見ていたオルカのオスは、甲板上のハリスの顔をシッカリとその目に焼き付け復讐の炎を燃やすことに……。
かくてヒトにも匹敵する知能を持つオルカと、漁師ノーランの死闘が始まるのだが、痛快なのはオルカの行動だ。ノーランの船が停泊する漁港に現れ、停泊中の漁船を転覆させたかと思うと、海上をまたぐ油送管を破壊して火をつけ、丘の石油貯蔵庫を爆破したりと、人間顔負けの作戦行動をとるのだ。
オルカにそそぐ監督のやさしいまなざしがこの作品の根底に感じられ、たぶんそれがこの映画の不思議な魅力の根源なのだろう。
「ジョーズ」のハデさはないものの、E・モリコーネの哀愁をおびた旋律とともに、なぜか心に残る一篇である。
(2009/07/03)