個別映画評
96時間
TAKEN

点数 | ![]() ![]() ![]() ![]() |
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年代 | 2008年 |
国 | フランス |
時間 | 93分 |
監督 | ピエール・モレル |
脚本 | リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン |
音楽 | ナサニエル・メカリー |
出演 | リーアム・ニーソン、マギー・グレイス、リーランド・オーサー、ジョン・グライス、デヴィッド・ウォーショフスキー |
この映画の主役を務めるリーアム・ニーソンは不思議な役者だ。その、彫りの深いシンコクそうな顔を、まるでトレードマークに でもしているようにいつも同じだ。それでいてスーパーヒーロー「ダークマン」と、当たり役ともいえるオスカー・シンドラーを演じ分けてしまうのだから恐れ入る。
元CIA工作員ブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン)は、任務に追われて家族を顧みず、離婚して今は孤独なひとり身だ。だが、前妻と暮らす娘のキム(マギー・グレイス)との絆だけは大切にしてきた。ところが、友だちとパリ旅行に出かけたキムから、ある日突然、彼の携帯に電話が掛ってくる。宿泊先のホテルで友だちがさらわれ、自分の身も危ないというのだ。ブライアンは娘に身を隠すよう指示するものの、携帯を通して聞こえてくるのは誘拐現場の生々しい音声だ。そして、これを最後にキムの行方はわからなくなる……。
かくて、“娘を助けるためならエッフェル塔でも壊してみせる”と豪語して、悪党たちの根城に単身飛び込む、父親ブライアンの、娘奪還劇が始まるのである。
物語の筋立てはきわめてシンプルだ。さらわれた娘をさがす父親が、誘拐にかかわる悪党どもをひとり、また一人とあばき出し、容赦なくブッ潰しながら娘の影を追うのである。これこそまさに、深刻顔のニーソンに“打って付け”の役どころ、といえるのだ。観客は父親ブライアンに何の迷いもなく感情移入できるし、父親の一味に加える鉄拳制裁が容赦なければ容赦ないほど、観客の喝采も大きくなっていく計算だ。そしてもう一つの成功の要因が“タイムリミット”の設定にあることは言を待たない。このことがストーリーにほどよい緊迫感とスピード感をもたらし、見る者の耳目を惹きつける。うまい仕掛けである。
最近の映画は2時間を超えるものが多いが、長ければいいというものでは決してない。本作は93分と短めだが、シンプルな構成と豊かな味付けこそ、おいしい映画の調理法だろう。
(2009/08/26)