個別映画評
スペル
DRAG ME TO HELL

点数 | ![]() ![]() ![]() ![]() |
---|---|
年代 | 2009年 |
国 | アメリカ |
時間 | 99分 |
監督 | サム・ライミ |
脚本 | サム・ライミ、アイヴァン・ライミ |
音楽 | クリストファー・ヤング |
出演 | アリソン・ローマン、ジャスティン・ロング、ローナ・レイヴァー、ディリープ・ラオ、デヴィッド・ペイマー |
「死霊のはらわた」や「ダクーマン」で売り出し、近年の「スパイダーマン」の大ヒットで一躍ブレイクしたS・ライミの最新作である。本作は「スパイダーマン」ほどのスケールのデカさも派手さもないものの、B級ティストのノリで押しまくるライミ演出は快調そのもの。おどろおどろしくも小粋なタイトルでのっけから観客を引きつける。
主人公は銀行の融資係クリスティン・ブラウン(アリソン・ローマン)だ。彼女は恋人クレイ(ジャスティン・ロング)の気位高い両親にアピールするため、空いている次長ポストを狙っており、そのためにはライバル行員に仕事で差を付けたいと考えていた。そんな時、ひとりの老婆ガーナッシュ(ローナ・レイヴァー)が窓口を訪れ、不動産ローンの延長を申し出る。出世がチラつくクリスティンは、3度目となる延長申請を理由に拒否することで上司に成果が示せると、泣かんばかりに哀願する老婆の申し出を冷たくキッパリとはねつけてしまう。
だが、この判断が彼女を恐怖の3日間へ突き落し、その果てに待つ地獄の炎まで彼女は見ることになってしまうのだ。
その夜、残業を終えたヒロインが地下の駐車場に向かうと、待ち伏せていた老婆が突然襲いかかってくる。死に物狂いでヒロインも応戦、その場は老婆を撃退するものの、以後、恋人クレイと占い師を味方につけたヒロインVS怪婆の激しいバトルが展開されていくことに。ほんの些細な不親切から生まれた逆恨みが、恐怖に形を変えて怒涛のように主人公を襲いはじめるという設定が面白い。
不気味に伸びてくるカゲ、顔面をうるさく飛び回るハエ、窓から吹き込んでくるカゼ、などなど。ライミが描く恐怖の仕掛けは、時には観客をイスから飛び上がらせ、時にはクスリと笑わせ、時にはヒロインが味わう恐怖と同じ恐怖を観客にも味あわせながら、巧みな話法で恐怖を盛り上げる。この映画のパンフに“エンターテインメント型アトラクション・ムービー”とあるが、まさにその通りで、恐ろしくもあり、おかしくもあり、音におびえ、映像にふるえる、そんな感覚を観客も共に体感するがごときこの映画。新しきホラー映画の誕生、とでも呼べそうな大満足の一本だ。
(2009/11/09)