個別映画評
運命のボタン
THE BOX

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年代 | 2009年 |
国 | アメリカ |
時間 | 115分 |
監督 | リチャード・ケリー |
脚本 | リチャード・ケリー |
音楽 | ウィン・バトラー、レジーヌ・シャサーニュ、オーウェン・パレット |
出演 | キャメロン・ディアス、ジェームズ・マースデン、フランク・ランジェラ、ジェームズ・レブホーン |
イギリスの作家W・W・ジェイコブズの小説に、古典的ホラーの名作「猿の手」という短編がある。魔力を秘めた干からびた猿の手が、その持ち主の願いを三つ叶えるが…というオチも皮肉なお話だ。そして、本作の作者リチャード・マシスンもまた、そんな“奇妙な味”を得意とする作家だ。本作「運命のボタン」が描くのは、人間の欲望とそこから生まれる悲劇だ。どことなく「猿の手」に似ているが、ただこちらはその、現代版みたいなお話になっている。
舞台となるのは、NASAの宇宙開発計画が盛んな1976年の12月だ。クリスマス間近の16日早朝、主人公家族が暮らす家の玄関に1個の箱が届けられる。中には赤いボタンのついた奇妙な箱が入っていて、その夕方訪れた老紳士が、箱を開けた夫婦にこう告げる。24時間以内にこのボタンを押せば、100万ドルの現金が手に入る。ただ、どこかで誰かがひとり死ぬ、と……。
主人公で高校教師の妻を演じるのはキャメロン・ディアス。NASAに勤め、宇宙飛行士の試験に落ちる夫をジェームズ・マースデンが演じている。夫妻には息子が一人いる設定だ。だがここでのキャメロンに、いつもの明るい笑顔はない。そして、不気味な老紳士に扮するのがフランク・ランジェラだ。ヤケドで大きく左頬が欠損した異様な顔で、静かに語りかけるその姿はミステリアスで強烈だ。
話の流れとして当然妻のディアスが、さんざん迷ったあげくボタン押してしまう。夫妻は老紳士から大金を受け取るものの、ボタンを押した同じ時刻にひとつの命が消えていたことを、この時ふたりはまだ知らない。と、いうあたりまで、漠とした不安に包まれたまま進行する前半は、それなりに楽しめる。だが、SFまがいの展開となる後半は、CG映像の連発でゴタゴタしていてわかりづらい。イメチェンで熱演しているC・ディアスには気の気の毒だが、どうもそのあたりがこの映画のネックでもあるようだ。
(2010/11/02)