個別映画評
フライド・グリーン・トマト
FRIED GREEN TOMATOES

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年代 | 1991年 |
国 | アメリカ |
時間 | 130分 |
監督 | ジョン・アヴネット |
脚本 | ファニー・フラッグ、キャロル・ソビエスキー |
音楽 | トーマス・ニューマン |
出演 | メアリー・スチュアート・マスターソン、メアリー=ルイーズ・パーカー、キャシー・ベイツ、ジェシカ・タンディ |
題名の「フライド・グリーン・トマト」とは、この物語に登場する駅前カフェ「ホイッスル・ストップ」の看板料理の名で、スライスした青いトマトのカラ揚げを指す。
チョコレートが手放せない太り気味の主婦エヴリン(キャシー・ベイツ)は、そんな自分自身が厭で、自分に見向いてくれない夫も厭で、すっかり生きる目的を見失っていた。 そんな時、彼女は訪れた老人ホ−ムでひとりの老女ニニー(ジェシカ・タンディ)と出会う。話し上手で元気なその老女は、こうしてエヴリンに、この町で起きたある出来事を語り出す。それは一一。
さかのぼること数十年前の南部アラバマ。まず語られるのは、そこに住む活発な少女イジー(メアリー・スチュアート・マスターソン)のエピソードだ。彼女の大好きな兄バディが突然の事故で死亡。悲しみのあまり堅く心を閉ざしてしまうイジー。そんな少女の心を開かせるのがバディの恋人だったルース(メアリー=ルイーズ・パーカー)だ。愛する者をなくした悲しみを共有するふたりは、それ以来欠かせぬ親友になっていく……。
この時代の女性にはめずらしく奔放で自由で行動的なイジーと、どこか頼りなげではかなげなルース。この、性格のまるで違うふたりの“絡み”がドラマの主軸には違いないが、さらにそこに、頻繁に老人ホームを訪れてはニニーの話に引き込まれていくエヴリンが、次第にその老女と心を通わせ自分の生きる道をそこに見出すエピソードもまた、この作品の見どころだ。
現在と過去を回想でつなぎながら、1930年代当時の情緒ゆたかな風景と、そこに暮らす人々を見つめる視線があたたかい。と同時に、人種差別にほんろうされる黒人たちや、彼らを擁護する人間たちの、やりばのない怒りと苦悩もまた、画面ににじむのだ……。ハートフルな主題の中にも厳しい現実を盛り込んで見せた監督J・アヴネットの、これは代表作と言っていい。
(2011/3/10)