個別映画評
トゥルー・グリット
TRUE GRIT

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年代 | 2010年 |
国 | アメリカ |
時間 | 129分 |
監督 | ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン |
脚本 | ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン |
音楽 | カーター・バーウェル |
出演 | ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ヘイリー・スタインフェルド、ジョシュ・ブローリン、バリー・ペッパー |
その風貌からして西部男を思わせた俳優ジョン・ウェイン。彼が演じた多くのキャラクターの中で最も“ハマリ役”だったのは大酒のみで豪快なアイパッチ姿の保安官“ルースター・コグバーン”ではなかったか。何故なら彼は、その役で初めてオスカーを手にしているからだ。劇中、手綱を口にくわえたコグバーンが、右手にライフル左手に拳銃を構えてブッぱなしながら馬を駆る名場面を覚えている映画ファンも多いはずだ。これはその映画「勇気ある追跡」(邦題)のリメイク作である。雇い人の男に父親を殺された農場主の娘が、父の仇を討つべく、カネで雇った連邦保安官と、別件で男を追っていたテキサス・レンジャーとで、その男を追跡する物語だ。
この手で必ず仇を討つ! 固く心に誓った14才の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は、こうして父が殺されたアーカンンソー州のこの辺境の町、フォートスミスにやって来る。季節は小雪の舞う『冬』だ。
しかし、男はすでに町の保安官も手が出せない先住民居住区の奥まで逃げていたのだ。そこで彼女は、トゥルー・グリット(真の勇気)の持ち主と町で噂の保安官コグバーンに、自分の同行を条件に男の追跡を依頼する。そんなマティの危険も承知の申し出を、小娘のたわごととばかりに取り合わないコグバーンが、彼女の真剣さと本気度を知って同行を認めるくだりが痛快だ。そしてもう一人の同行者、レンジャー隊員のマット・デイモンがこれに加わり、ここに、荒野を越え河を渡る3人の過酷な旅がはじまることになる……。
撮影当時、まだ13才だったというマティ役のH・スタンフェルドが、大スターのオジサンふたりを向こうに回して一歩もヒケをとらぬどころか、彼らのカゲを霞ませかねない存在感を発揮しているのだからオドロキだ。ただ、暗めの色調で統一された開巻から、シリアスな余韻を残すラストまで新たな工夫は見られるものの、青い空や美しい紅葉など、目のさめるような『秋』をバックに描かれたオリジナル版の素晴らしさには及ばなかった印象だ。
(2011/03/22)