個別映画評
フランケンウィニー
FRANKENWEENIE

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年代 | 2012年 |
国 | アメリカ |
時間 | 87分 |
監督 | ティム・バートン |
脚本 | ジョン・オーガスト |
音楽 | ダニー・エルフマン |
出演 | 声の出演: キャサリン・オハラ、マーティン・ショート、マーティン・ランドー、チャーリー・ターハン |
「アリス・イン・ワンダーランド」や「ダーク・シャドー」など、その一風変わった作風で知られるティム・バートンの、こちらも一風変わった最新作だ。しかも、彼の作品の“原点”でもある同名短編を、今度は粘土で作った人形を少しずつ動かして撮影するいわゆるストップモーション・アニメーションで作成。今はもうあまり使われない白黒フィルムに、最先端の“3D”をからめるところがいかにもこの監督らしいし、加えて、登場するキャラクターたちがどれも「美男美女」ならぬ、どこか不気味な「異男異女」であるところなど、もう全編これ“バートン印”満載の珍品だ。
舞台は今からちょっと前のアメリカ。その小さな町の郊外に暮らす10才の少年ヴィクターが主人公だ。友達もいない彼は、発明や映画作りに熱中する毎日だ。そんな彼の唯一の友は愛犬のスパーキーだが、そのスパーキーがある日、野球のボールを追いかけてクルマに轢かれ死んでしまう。愛犬の死を受け入れられない彼は、学校で学んだ科学の実験をヒントに、何とか愛犬を生き返らせたいと、ある嵐の夜、墓からスパーキーを掘り出すと、実験どおり稲妻に打たせて愛犬の再生を試みる――。
そう、云うまでもなくこれは、かの有名な人造人間「フランケンシュタイン」に捧げるバートン流のオマージュなのだ。従ってストーリーは『フランケン』ならぬ『フラン犬』スパーキー再生の物語、ということになる。それだけではない。ここにはホラー映画や怪獣映画など、今のバートンをつくり上げたこれまでの要素が全て詰まっているのである。だからいろんなモンスターたちのオンパレードだ。フランケンはもとより、狼男、ドラキュラ、そしてバートンが愛する日本の怪獣『ガメラ』まで登場するのだからうれしくなってしまう。
しかしである。そんなモンスターたちの暴れっぷりが、バタバタしすぎて感心しないばかりか、なんとペット墓地に、あの“キティちゃん”の墓までつくるのは、どうみてもバートンの“フザケすぎ”としか思えない。それにしても切ないのはスパーキーだ。水を飲めば継ぎ目から漏れ、シッポを振ればそれがポロンと落ちるのだから哀しすぎる。フランダースのパトラッシュには勝てないものの、このブサイク犬スパーキーもまた、まぎれもない“泣かせるワンちゃん”の仲間なのだ。
(2013/5/3)