個別映画評
ジャッジ!

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年代 | 2013年 |
国 | 日本 |
時間 | 105分 |
監督 | 永井聡 |
脚本 | 澤本嘉光 |
音楽 | 平沢敦士 |
出演 | 妻夫木聡、北川景子、リリー・フランキー、鈴木京香、豊川悦司、荒川良々、玉山鉄二、玄里、田中要次 |
題名だけ見ると「裁判もの」か「スポーツもの」といった雰囲気だが、中身はと言うと、これが意外にもあまり知ることのない「広告業界」の内幕もの、とでも呼べそうな作品だ。だってそうだろう。昼夜を問わずのべつ幕なしに流され続ける“CM”がテーマの映画など、これまでになかったからだ。その意味ではこれは珍しい作品ではある。
で、そのお話は、気まぐれな上司の豊川悦司から、自分の“替え玉”としてCMコンテストの審査に行け、と審査員を押し付けられる大手広告代理店の落ちこぼれクリエイターの主人公、妻夫木聡が、優秀だがいつも自分を見下してかかる同僚のヒロイン北川景子を、無理やり口説き落とし共にCMの世界一を決める祭典“サンタモニカ広告祭”に出席することになる。現地では夜ごとパーティが開かれ、そこではパートナーの同伴が必須だったのだ。かくて、妻夫木と北川の今をときめく人気スターのふたりが、偽夫婦に成りすまして世界的な広告祭に乗り込んで行くと言うのは、“話し”としては面白い。
だが、そのオープニングのキツネに扮した主人公が腰を振り振り“麺のコシ”の強さをアピールするキツネうどんCMの撮影シーンからして面白くない。まして上司の豊川悦司がダメダシ連発でキツネ姿の妻夫木を、イジリ倒す場面もおんなじだ。で、結果として広告祭での真の目的が、強力スポンサーが推す“ちくわCMの入賞”であり、失敗は即“クビ”という主人公のピンチへと繋がっていく。
そして始まる広告祭では、自社の作品を有利にしようと画策する一癖も二癖もある審査員たちが、それぞれ持ち寄った作品の売り込みで、互いに牽制しつつもヒートアップしている、という緊迫した中盤へと進むのだが、残念なのは、お人好しでバカ正直な主人公と、頭はキレるがギャンブル好きなヒロインという役どころの主役ふたりの演技が、どう見ても“オーバーアクト(演技過剰)”に見えてしまうことだ。
いくら“コメディ”と言えどもその“やりすぎ”はやはり頂けない。某映画雑誌によると、監督、脚本ともにCM界の実力者らしいが、かと言って初めから終わりまでコマーシャル・ベースで繋がれてもな――である。映画にはこれまで多くの名匠たちが築き上げてきた“文法”と言うものがある。最近ではあの“クロサワ”も見たことない若い作家もいるようだが、是非とも先人たちの作品を見て学んでもらいたいものだ。
(2014/7/25)