個別映画評
ボーグマン
BORGMAN

点数 | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
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年代 | 2013年 |
国 | オランダ/ベルギー/デンマーク |
時間 | 113分 |
監督 | アレックス・ファン・ヴァーメルダム |
脚本 | アレックス・ファン・ヴァーメルダム |
音楽 | ヴィンセント・ファン・ヴァーメルダム |
出演 | ヤン・ベイヴート、ハデヴィック・ミニス 、イェロン・ペルセヴァル 、エヴァ・ファンデ・ウェイデーヴェン |
映画は冒頭、“そして彼らは自らの集団を強化するため地球へ襲来した”なる字幕で幕を開ける。続いて、ズボンを穿きベルトをしめ、拳銃に弾を込める男、あるいは槍や鎌などを手にした男たちが、神父をリーダーに森へ向かって動き出す。そう、彼らは森の地下に住む異星人、つまり「ボーグマン」を駆逐するために集まった男たちだったのだ。結果的に神父たちは一足違いでボーグマンに逃げられてしまうものの、彼らの地下住居を徹底的に破壊してしまうのである。
この尋常でないオープニングから、画面にはタダならぬ空気がただよう。そこにはこれから始まる物語の異常性が凝縮されているようで、観る者の気をそそらずには置かない。もちろん題名の「ボーグマン」とはそのモグラ男たちのことだ。彼らが果たして何者なのかどこから来たのか、劇中で明かされることはない。
森を追われた男が次に姿を現すのが閑静な高級住宅街の一角だ。男は庭付き一戸建てで夫と3人の子供と暮らす主婦の家に現れると、「風呂を使わせてほしい」と執拗に懇願。だが、出てきた夫にボコボコにされてしまう。ところが、ボコられた男の身を案じた主婦は、夫に内緒で風呂に入れ離れの小屋に住まわせるのだ。しかし、何故かこの直後から主婦の周辺で不可解な出来事が起き始める。例えば雇っていた庭師が突如失踪したり、子供たちとその若い家政婦が理解不能な行動を繰り返すようになっていく。そしてさらに、仲間のボーグマンが次々に現れると、なんと主婦までもが夫に殺意を抱くようになる。
気色が悪いのはそれだけではない。たとえばそれは、男が不可思議な話を3人の子供たちに聞かせながら飲ませる得体の知れぬドリンクであったり、人を無造作に殺すと、その死体の頭をバケツに突っ込み、セメントで固め水草よろしく足を上にして湖底に沈めるなど、そんな画面を包む“異様な空気感”が中々いい。
本作はスペインはバルセルナ近郊の海辺のリゾート地、シッチスで毎年10月に行われる映画祭において見事グランプリに輝いた作品だ。過去にこの賞を得たのはあのホラー名作「死霊のはらわた」や、謎の立方体に閉じ込められた男女6人の脱出劇「キューブ」などがある。つまり本作も、これら有名作と肩を並べたことになる。その意味からもこれは、一見の価値があるだろう。
(2015/04/07)