個別映画評
チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密
MORTDECAI

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年代 | 2015年 |
国 | アメリカ |
時間 | 107分 |
監督 | デヴィッド・コープ |
脚本 | 原作: キリル・ボンフィリオリ |
音楽 | マーク・ロンソン、ジェフ・ザネリ |
出演 | ジョニー・デップ、グウィネス・パルトロー、ユアン・マクレガー、ポール・ベタニー、ジェフ・ゴールドブラム |
時代劇を見ていていつも不思議に思うことがある。それはまだシェーバーや剃刀のなかった時代の男たちがそれこそ武士も町民も、まるで夕べ剃ったかのようにキチンとヒゲを処理していることだ。そう、ヒゲは三日も剃らないとすぐ目立つ厄介な存在なのだ。当時の男たちは今みたいに安全なT字型の“ソリ”などでなく、たぶん切れ味鋭い小柄(日本刀に付属する小刀)か何かで剃っていたのだろうから、今とは比べられぬほど苦労があったと思うからだ。
余談はさておき、ここに登場する主人公は剃るよりもさらに手入れの厄介な口ひげ男ジョニー・デップのチャーリー・モルデカイなるキザ男だ。彼は生やし始めたばかりの口ひげを、妻のグウィネス・パルトローに嫌われながらも剃る気はない。彼女が自分とキスする度にその口髭の感触の悪さに「オェツ」と吐きそうになってもだ。そんな彼はロンドン郊外に大きな屋敷を構えて優雅に暮らす貴族だが、実はそれは見かけだけで、イギリス政府から借りた800万ポンドの借金が元で、今や彼は破産寸前の危機的状況に追い込まれていたのだ。そんな矢先、ある事件が起きる。絵画修復士が何者かに殺害され、フフランシスコ・ゴヤの名画が盗まれたのだ。しかも盗んだ男が国際テロリストの男だと判明したため、英国諜報機関MI5はユアン・マクレガーの警部補を、美術品に詳しく裏社会にも通じている主人公のもとへ派遣。盗難絵画の捜索を依頼する――。
こう書いてくると面白そうだが、残念ながらちょいちょい入れてくる下ネタ会話はお寒いだけだし、更には実際にあったジョニデ自身の“泥酔司会事件”を、さながら開き直ったごとくギャグに使ってみたりと、演出上の“お遊び”かも知れないが、観ているこちら側はその遊び過ぎにはついていけない。
そんな中で光るのは、ポール・ベタニー扮する主人公の用心棒ジョックだ。撃たれても切られても殴り倒されても主人公を守って戦うジョックが、見ていて何とも頼もしいのである。対照的にパッとしないのが主人公のジョニデで、喧嘩は弱いし、剣を握ってはへっぴり腰だし、見ていて何とも情けない。この二人の男の違いこそが本作の狙いかも知れないが、それにしても主人公が、どんなに妻に嫌われても最後までヒゲを剃らないのは、このキャラの“シリーズ化”が狙いか、と思わせるラストがチョット気になる。
(2015/07/01)